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ロボットビジネスレビュー

ロボット業界に転身して、3年目。少しだけ、ロボットビジネスのことがわかってきました。その内容をまとめていくために始めました。羽田卓生(アスラテック株式会社、ロボットパイオニアフォーラム幹事)

コミュニケーションロボットを実践投入するための7つの壁

 いま、羽田空港で「Haneda Robotics Lab(Haneda Robotics Lab)」というロボットの実証実験が行われている。

  1.  清掃
  2.  移動支援
  3.  案内

 の3分野、計17種のロボットが参加している。ここまでのロボットが公共空間で実証実験したのはあまりないケースではないだろう。

 このブログの筆者である自分自身も、コミュニケーションロボットのチームに混成チームの一企業として参加をしてきた。

 ロボットで行うことは、

 ・1週間の間、羽田空港で人が行っている案内業務を多言語でどこまでできるか?

というもの。

 これを行うために必要なことを、下記の7つのポイントにまとめてみた。

1.安定稼働するロボット

 1週間となれば、安定しているロボットでないと難しい。1台で乗り切れないとすれば、それ相応の、予備機も必要。何かあれば、修理できるメンテナンスチームも必要。

 

2.電源確保

 そのろぼっとが常時使える電源が必要。電源がちゃんと用意されてない環境では、流石にロボットは動かない。

 

3.ネットワークの確保

 稼働させるロボットが、ネットワークが必要な場合、当然、ネットワーク環境の確保が必要。今回は、人も機器も多い公共空間。とくに、Wi-Fi区間の対策は念入りに行う必要がある。ご存じない方も多いですが、Wi-Fiはベストエフォート方式(通信品質が保証されていないってこと)なので、人や機器が多いところ=Wi-Fiを使ってる人が多いところでは、つながりにくくなるんです。きっちり実証実験できるためには、安定したネットワークは必要条件。

 

4.現場の環境把握

 ロボットを設置、運用する場所の環境を把握していることが必要。ロボットに音声認識させるなら、その環境の騒音はどの程度か?は知っておく必要がある。公共空間であれば、スピーカーが設置されていることもある。案内放送とロボットのマイクがぶつからないように角度を考える必要もある。

 光の状況も必要。カメラで認識させる場合は、逆光で認識できないということもある。太陽光が入る場所であれば、時間ごとに環境は変化する。

 あとは、床に段差がないか、フロアはロボットが移動できる素材かも重要。

 なんといっても、人の流れを予測しておくことが重要。いつがピークタイムか、どのような人がロボットに接してくるかなど。

 

5.実施する業務の分析

 実際、人が行っている業務であれば、その業務内容を綿密に把握する必要がある。案内業務であれば、FAQなどのマニュアル類はすべて入手したい。人の業務が分析できてもいないのに、当然、ロボットを運用できるはずがない。

 また、その業務のKPIを間違わないのも重要。応対時間なのか、満足度なにか、何をゴールとして行っている業務の、ロボットでの代替かを間違えると、成果はでない。

 

6.多言語対応スキル

 今回のオーダーは「多言語」。当然、各種ロボットでの案内も多言語で行う必要がある。チームに、多言語能力があることが重要。ロボットの音声合成は、ときどき、間違った発音を行うことがある。ネイティブチェックをすべての発話で行うほうがいい。

 

7.ホスピタリティ

 ついつい、ロボットの機能を全面に出したくなる。今回のオーダーは案内。チーム全体で、「いかにお客さまにいい案内をするか?」という気持ちを持つことが重要。ロボットの自慢大会では決してない。

 

しかし、ロボットを未来のすごい技術で、なんでも、すぐできるはずという誤解は根深い。人間でも半年かけて、研修する業務であれば、その同程度の時間をロボットの運用落とし込でもかかるんだろうな、本当は。やっぱり、人の能力は、高い。

 

 

ロボット大国日本は危うい?

 先日、アスラテックより、「世界のロボットスタートアップに関する調査結果」を発表した。

世界のロボットスタートアップに関する調査結果を発表 – アスラテック株式会社

 

THE ROBOT REPORT で取り上げられているロボットスタートアップの件数を国別で見ると、表1のようになる(上位 10 カ国)。アメリカが279 件で最も多く、続いてフランス(46 件)、中国(30 件)となり、日本は 16 件で9 番目だった。 

 驚くことに、なんと9位。元ネタの日本のスタートアップの調査には、少し懐疑的なところがあるが、アメリカの279件に遠く及ばないのは事実。昨年、西海岸のロボットベンチャーのイベントに参加してきたが、日本より、その数が違うのは間違いない。

 しかし、なんで、ここまで差があるんだろうか?

 

 経産省が発表したこのレポートにその要因が書かれている。

https://vbcc.jp/wp-content/uploads/2015/01/Industrial-Policy-ja.pdf

・若年層の起業がすくない

・開業率が低い

など。

 

ロボットも、IT関連同様に、日本が得意だったのにも関わらず、米国に逆転されるということが起きるの可能性が大きいかもしれない。

 

 

B向けのロボットビジネスが立ち上がってきた?

ここ最近、B向けのコミュニケーションロボットの事例が増えてきた。

パルロ(富士ソフト)、Pepper(ソフトバンクロボティクス)、Tapia(MJI)、Sota(ヴイストン)、ロボホン(シャープ)、ナビロボ(ロボットゆうえんち)、アクトロイド(ココロ)など。

 

C向けにも販売されているのもあれば、そもそもB向けのロボットもある。C向けのロボットの話よりも、B向けのほうが直近では多いように思える。

その中でも、気になった事例をいくつか。

 

・Tapia・・・「変なレストラン」での事例

【ハウステンボス】ロボットの王国「変なレストラン」レポート | ロボスタ

この記事の通り、ハウステンボスの「変なレストラン」では多くのロボットが働いている。こういう形で、法人がロボットを運用し、コンシューマー向けのサービスとする形態は、ひとつのパタンと言える。

その中で、Tapiaは、各テーブルで、入退店管理などのお客向けのコミュニケーションを担当している。

おそらく、この変なレストランのために、カスタマイズを施していると思われる。

 

・ロボホン・・・法人向け料金プラン追加

 

robot.hatenablog.jp

 このブログでも記載したように、ロボホンの法人向けの料金プランが発表された。

当初は、コンシューマー向けの振り切った商品のように思えたが、

法人需要もあるのであろうこのような料金プランが発表。

 

ロボットはまだまだ高いし、一般消費者では手を出しにくい。

高額なものゆえに、B向けでも販売数を伸ばしていくのは、重要なのだろう。

 

アクトロイド・・・普及モデルの開発

www.nikkei.com

ココロのアクトロイドの普及モデルの開発が発表された。

価格は、900万円からとなっている。

従来は特注品が多く、2000万~2500万円程度と高価なため商用利用が限られていた。

 この価格から比べると、半額以下となる。

それでもまだまだ高いが、法人で恒常的に使う用途があれば、費用対効果は見えてくるケースも多いのだろう。

 

高額、運用が難しい、メンテナンスが必要・・・。

このような課題の中、法人でのロボット利用のほうが、C向けよりも立ち上がりが早い部分も出てきている。

何にしろ、ロボットが使い続けられる分野が増えることが、この業界にとっては重要。

 

2020年の東京オリンピックに向けて、コミュニケーションロボットのB向け事例は加速的に増えていくことだろう。

 

 (参考データ)

コミュニケーションロボットの企業需要動向(2016年1月) - 株式会社 MM総研

 

 

 

ロボホンの法人向け料金プラン

『ロボホン』の法人向け販売ならびにサービスの提供を6月27日(月)より開始されたことがリリースされた。

モバイル型ロボット電話『RoBoHoN(ロボホン)』 法人向け販売・サービスの提供を開始 |ニュースリリース:シャープ

具体的には下記のような内容。

法人でも契約しやすいように年間プランになっている。

『ロボホン』法人向けサービスプラン概要

サービスプラン

料金(年間)

提供内容

ビジネス
基本プラン

15,000円+税

(事務手数料含む)

Wi-Fi®接続やモバイル回線接続により、対話やカメラ、プロジェクターなど『ロボホン』の全ての機能が使用できます。

ビジネス
ケアプラン(保守)

<初年度>

55,200円+税

<2年目以降>

60,000円+税

『ロボホン』が故障した時などに、修理料金を補償するサービスです。商品購入から最大5年間、修理料金(技術工料、部品代、送料)を補償します。

● 法人向けサービスプランは、1年単位の契約となります。

●『ロボホン』本体は、全国の家電量販店などでも購入いただけます。
『ロボホン』本体購入後、サービス登録(ビジネス基本プラン、ビジネスケアプラン)のみを専用フォームから申込みいただくことも可能です。

● モバイル通信サービスは、法人向けには提供しておりません。


<「ビジネスケアプラン(保守)」について>

● ビジネスケアプラン(保守)は、『ロボホン』本体を購入の際、もしくは、ビジネス基本プランと同時に申込みください。
本体購入後、もしくは、ビジネス基本プラン申込み後の加入はできません。

● 期間中の修理は何回でも可能ですが、料金補償の適用は年2回までとなります。(全損水没修理は1回まで。複数台同時申込登録した場合、補償適用回数を分け合うことが可能です。)

 

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ケアプランが、個人向けとは大きく異なる。

コストの見通しがつきやすいという点においては、

保守が高くても追加費用が掛からないのは利点だ。

 

 

Sotaの料金プラン

ヴイストンのSotaの料金プランが発表になった。

現状、Sotaは法人向けだけの販売となっている。

http://sota.vstone.co.jp/home/category/item/

 

現在、本体を購入できるのが、

・Sota デベロッパー版 (Sotaクラウド・保守サービス付属)

だけになっている。

価格は、211,680円(税込)。

このプランの中には、

・本体一式(※ラズパイかエジソンは同じ値段で選べる。)

・2年間分の保守プラン

・1年間分の基本プラン

となっている。

2年使う前提で、基本プランを1年延長すると、

・Sotaクラウド デベロッパープラン

が必要で、この1年分の価格が、51,840円(税込)

 

すなわち、2年間使うことが前提であれば、

263,520円(税込)ということになる。

 

 

 

個人向けロボットの販売で重要なこと

二子玉川の蔦屋家電にて、ソフトバンク コマース&サービス主催でロボットを実際に触れて体験できるイベント「ROBOT LIFE を体験しよう!」が開催されている。

real.tsite.jp

実際に行ってきました。

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土曜日ということもあり大盛況。

子供の食いつきは半端ない勢い。

こんなけのロボットに囲まれたらそりゃテンション上がりますよね。

 

知らないものの購入検討するうえで、やはり、実際に触れることは重要。

なかなか、一度も買ったことないロボットを、しかも、高価なのを、ネットだけで購入判断するのは一般人には難しい。

触って、確かめて、納得して買うのがやはり安心できるのではないかと思う。

今回は、その場では購入できないが、こういうスタイルの販売店が増えていけば、

市場も活性化するのではないかと思う。

 

現場で、課題をいくつか感じた。

1連続稼働問題

2無線接続問題

音声認識問題

の3つ。

 

1連続稼働問題

は、写真にもある通り、ロボットはずっと動くことはできないので、

休ませる時間が必要になる。バッテリーの充電や、駆動部の連続稼働による問題が、必要になる要因。

 

2無線接続問題

ロボットは、WiFiでネットに接続しないとちゃんと使えないものが多い。蔦屋家電のような多くの機器があり、多くの人がいる場所だと、WiFiの品質が出ないことがしばしばある。ゆえに、この問題を回避する必要がある。

 

音声認識問題

多くの人がいて、多くのロボットがあって、いろんな音が存在する場所で、音声認識はとても厳しい。人間だって、雑踏だとちゃんと聞こえないことがあるのに、ロボットだからと言って、出来るわけでない。

売り場の人やロボットの密度が高くなればなるほど、どんどん認識が難しくなる。

 

この問題を売り場で回避するのには、どうするものか?

1に関しては、機体を増やすしかない。

2、3に関しては、店頭用のスペシャルバージョンを用意するしかないかもしれない。

思い切って、有線でネット接続して、外部マイクなどで、認識を向上させるとか。

 

携帯電話などでも、店頭用のスペシャルバージョンを用意したりすることもあるし、虚偽でなく、ちゃんと体験してもらうための処置ならいいではないかと思う。