アジアのロボットブーム過熱か
トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)の、ボストン・ダイナミクスとシャフトの買収が報じられたのが、6月1日。
そこから半月、振り返ればアジアのロボットニュースが多いタイミングであった。
1 中国家電最大手の美的、ロボットの独KUKAに買収案提示へ
中国最大の家電メーカー、美的集団(ミデア・グループ)がドイツの産業用ロボットメーカーであるKUKA(クーカ)に買収案を提示する準備を進めている。事情に詳しい関係者2人が明らかにした。
関係者は情報が非公開であることを理由に匿名で、買収案が18日にも提示される可能性があると語った。美的はKUKAへの出資比率を少なくとも30%にすることを目指しているが、完全に経営権を握る公算は小さいという。30%出資となれば、美的はKUKAの筆頭株主となる。
中国家電最大手の美的、ロボットの独KUKAに買収案提示へ-関係者 - Bloomberg
2 ASUSの599ドルのロボットは、あらゆる家事を手伝おうとしている
ASUSは、今年のComputexでZenbook、Transformer、およびZenFoneの新しい商品ラインを発表する。しかし、同社のネーミングが残念な “Zenvolution” パズル、最後のピースはWall-E(ウォーリー)と、映画『ロッキー4』でエイドリアンの兄、ポーリーとかなり不安な関係だったお手伝いロボットのSicoとを掛け合わせたような、輝く目をした小さなロボットだった。
ASUSの599ドルのロボットは、あらゆる家事を手伝おうとしている | TechCrunch Japan
3 SKテレコム、スマートホーム用ロボット「ブイヨ」を初公開
韓国通信大手・SKテレコムが秘密裏に開発していた人工知能搭載型スマートホーム用ロボット「ブイヨ(Vyo)」が、米学会誌を通じて初めて公開された。
12日、アイトリプルイー(IEEE)が発行した学会誌に、SKテレコムと世界的なロボット科学者ガイ・ホフマン(Guy Hoffman、コーネル大学教授)氏が共同開発した、ブイヨが紹介された。ブイヨは内蔵されたレンズから得た情報を使用して、家庭内のスマートホーム機器をコントロールする顕微鏡型ロボットだ。
SKテレコム、スマートホーム用ロボット「ブイヨ」を初公開 | ROBOTEER
まさに、日本、中国、韓国、台湾とロボットのニュースが駆け巡った。
ロボットベンチャーでいえば、アメリカのシリコンバレーが中心だったのは事実だが、その風が2016年に太平洋を渡ってアジアにもやってきたのではないかと感じる。
とくに、人型ロボットでいえば、日本から米国に一度渡ったのが、また、日本に戻ってきた形になった。
直近の国内におけるロボット企業への投資案件を見ていても、ベンチャーだが二ケタ億円の企業価値を算定されているのではないかと思われる会社も出てきている。
いろんな確度から見ても、ロボットブームの過熱が進んでいるのは間違いないだろう。
コミュニケーションロボット市場で「スキル」プラットフォームを押さえるのはだれか?
「アプリ」でなく「スキル」
このAmazon Alexaの記事を読んで、スマホのように「アプリ」と呼ばず、
「スキル」と呼ぶのが、ロボット的には確かにおさまりがいい。
早速、わたくしも「スキル」と呼ぶようにしたい。
Amazon Alexaのスキルが1000を突破(1月にはわずか135だったのに)…スキルストアの整備が早急に必要 | TechCrunch Japan
スマートフォンの場合では、PCなどからの延長で、「アプリケーション」「アプリ」と呼ぶのが確かにいい感じだ。
ただ、ロボットでは少し状況が違う。
ロボットには体=ハードウェアがあり、ハードとアプリがあいまって、出来ることが増える。
まさに、「スキル」。
移動できるアプリケーションをインストールしても、移動できるハードウェアがないと、「スキル」が増えない。
ダンスができるハードに、新しいダンスを覚えさせれば、どんどんダンス「スキル」が向上するということだ。
「アプリ」ストアの立ち上がったばかり
一番なじみがあるアプリストアとして、iPhoneのアプリを例に出してみよう。
昨年時点で、150万アプリがストアに登録されている。
もはや天文学的数字だ。
想像できる範囲のアプリはほぼあると言っても過言でない。
■日本で一般向けに販売されているコミュニケーションロボットのストア
ロビ | パルロ | Pepper | ロボホン | |
---|---|---|---|---|
ネット接続 | × | ○WIFI | ○WIFI | ○4GLTE/WIFI |
ストア | micrSDによる追加アプリ販売 | ○ | ○ | ○未公開 |
アプリ数 | 8 | 4 | 128 | - |
基本システムでのアプリ数は別 | 基本システムでのアプリ数は別 | 基本システムでのアプリ数は別 | - |
日本で代表されるコミュニケーションロボットのストアとアプリ数は上記の状況だ。
一番多いPepperでさえ、100を超えたばかり。
ただ、Pepperのandroidへの対応を発表しており、100万本を超えるandroidアプリが、Pepperにも対応していくことになる。
他のロボットプラットフォームとは思想を異なる戦略と言ってもいいのだろう。
なぜ、スマホのアプリはここまで広がったのか?
いろんな方がいろんな考察をされていると思いますが、
いままでのガラケー(=フューチャーフォン)と比べて、
- アプリケーションが機種が変わっても継続で使える
- 各種データが機種が変わっても継続で使える
- プラットフォームがバージョンアップで進化する
- 世界で同じプラットフォームが使われているので進化のスピードと規模が違う
ということがあるのではないかと考えられます。
つまりは、継続と進化がスマホにはあったから。
ロボットに必要は「スキル」プラットフォームは?
ロボットのアプリは、スマホよりも機種依存は当然大きい。
なぜなら、ロボットには体があり、その体はロボットごとでバラバラ。
さらには、同じロボットに、同じダンスを踊らせても、上手くいったり、時にはこけたりするくらい。
ハードを超えて、同じことができる「スキル」を配布するのは、現状は難しい。
アプリ作成者側で、ハードの依存を超えれるようにカスタマイズが必要になってくるだろう。
また、スマホに比べて、普及台数が少ないので、アプリビジネス、スキルビジネスの参入メリットがまだまだ少ない。
ポイントは、「機種依存」と「普及台数」だろう。
コミュニケーションロボット市場で「スキル」プラットフォームを押さえるのはだれか?
この領域は、Google、Appleなどの世界の巨大IT企業も巻き込んだ戦いになることは確実。
まずは、早くPCでいうところの「エクセル」「ワード」を見つけないといけない。
PCは、この2つのアプリケーションが誕生して、一気に普及が進んだ。
現状、コミュニケーションロボットのスキルといえば「かわいい」「面白い」といったところではないだろうか。
トヨタの、ボストン・ダイナミクスとシャフトの買収で何が変わる?
トヨタ、ロボ開発2社買収交渉 米グーグルから
【シリコンバレー=小川義也】トヨタ自動車が米グーグルからロボット事業の中核子会社2社を買収する方向で詰めの交渉に入ったことが31日、明らかになった。トヨタはロボットを将来の成長を担う事業のひとつと位置付けている。2社の人材を活用してロボットの開発体制を大幅に強化。自動運転技術などへの応用も視野に入れる。 売却交渉を進めるのは米ボストン・ダイナミクスと東京大学の出身者が設立したSCHAFT(シャフト)の2社
トヨタ、ロボ開発2社買収交渉 米グーグルから :日本経済新聞
という大きなニュースが入ってきました。
足つきのロボットに携わってビジネスをしている者には、
影響は多少なりあるニュースではないかと思います。
グーグルは取捨選択の中で、売却とした二足歩行ロボット2社を、
世界のモノづくり企業トヨタがまとめて買収する形になる。
■ネガティブな影響
・グーグルが二足歩行を見放したから、二足歩行自体がダメ
・西海岸で起きているロボットベンチャーブームが下火になる
・二足歩行は結局は日本だけのガラパゴスビジネスになる
・二足歩行はベンチャーが入り込める余地がなく、大資本しかできない領域になった
■ポジティブな影響
・トヨタが買収に動いた限り、実用化に向けてとことんやるはず。二足歩行に何かがあるはず
・日本のロボット技術がグーグルを経由して再評価
・二足歩行やるなら日本が世界の中心になった
・トヨタゆえに実用化までに時間がかかるから、その隙を狙える
とりあえず、思いつく限り列挙。
ロボット系への投資案件のまとめ その2
1 CANDY LINE(http://www.candy-line.io/)
4月21日設立。
資本金1000万円。
代表は、アイ・ビー(http://www.ibee.co.jp/)、イノベーションファーム(http://inn-farm.co.jp/)の岡田氏。
2 ロボットスタート(http://robotstart.co.jp/)
環境エネルギー投資を引受先とする 第三者割当増資で1億円の資金調達
http://robotstart.co.jp/press23.pdf
ロボットスタートの資本金は、124,700,000円(資本準備金含む)となる。
環境エネルギー投資 http://www.ee-investment.jp/
3 オリィ研究所(http://orylab.com/)Beyond Next Ventures株式会社が運営するBeyond Next Ventures1号投資事業有限責任組合をリードインベスターとして、合同会社ユーグレナSMBC日興リバネスキャピタル が運営するリアルテックファンド1号投資事業有限責任組合(以下、リアルテックファンド)、および、OriHimeのパイロットユーザーでもある藤澤義之氏他の個人投資家計8名も引受先とした第三者割当増資により、総額2億2977万円の資金調達 4 3次元メディア(http://www.3dmedia.co.jp/)株式会社産業革新機構とスパークス・グループ、及び三菱UFJキャピタル株式会社は、世界初の3Dロボットビジョンシステムを開発・販売する、株式会社三次元メディアの第三者割当増資を引き受け、新たな研究開発投資、販売体制強化など同社の今後の成長資金として、INCJが8億円、スパークスが2.5億円、三菱UFJキャピタルが5000万円を上限とする出資を行う。
http://www.3dmedia.co.jp/p0_news/press20160526.html
世界で発表された人型ロボットの種類は211種類
株式会社アールティが公開した情報によると、2016年5月時点で世界で発表された人型ロボットの種類は211種になる。
世界の人型ロボット | RT Humanoid Robot Institutes
国・地域ではいままで15国・地域が人型ロボットを発表している。
その中でも、日本が群を抜いて多く、140種ものロボットを発表してきた。
二位は米国の18種。韓国の13種と続く。
ロボット系への投資案件のまとめ その1
1 GROOVE X(http://www.groove-x.com/)
グローバルカタリストパートナーズジャパン(Global Catalyst Partners Japan)
スパークスグループ(SPARX Group)
上記2社で合わせて、数億円。
GROOVE Xは個人投資家や運用会社のスパークス・グループ、ベンチャーキャピタルのグローバルカタリストパートナーズジャパンによる出資で数億円を調達済み。最も大きな割合を占めるのは個人投資家だという。今後は開発で数十億円、量産化を含め総額100億円を投じる。必要資金は投資家などからリスクマネーとして調達する考えだ。
ペッパーの父が挑む、「癒やしロボ」の進化形 | ロボット | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
2 HiBot(https://www.hibot.co.jp/)
・シリーズA 3億円強 ドレーパ・ネクサス・ベンチャー(Draper Nexus)
robonews.net » Blog Archive » 最近新たな資金を得たロボット会社
・シリーズB 12億円 三菱UFJキャピタ ル株式会社など
http://www.hibot.co.jp/NewsRelease_SeriesB_NewBoard20160307.pdf
3 PLENGoer Robotics(https://www.facebook.com/plengoer/)
中国大手メーカーの GoerTek グループ(GoerTek)
https://plen.jp/jp/media/assets/etc/newsrelease_20160226.pdf
4 人機一体(http://jinki.jp/)
合同会社ユーグレナSMBC日興リバネスキャピタルが運用するリアルテックファンドとの第三者割当増資
http://jinki.jp/news_detail.html
5 Rapyuta Robotics(http://www.rapyuta-robotics.com/)
3億5100万円の第三者割当増資
CYBERDYNE
フジ・メディア・ホールディングス傘下のフジクリエイティブコーポレーション
ブイキューブ
SBIインベストメント
の各社で実施
6 ユニロボット(http://unirobot.com/)
USENグループのアルメックスによる第三者割当増資
増資後に、アルメックスの持ち株比率は、26%
当社連結子会社によるユニロボット株式会社との資本業務提携に関するお知らせ ニュース | 株式会社 USEN | USEN CORPORATION
7 Jibo(https://www.jibo.com/)
電通ベンチャーズが始動、MIT発のロボットベンチャー「Jibo」に3.6億円の出資 | TechCrunch Japan
・KDDI
「KDDI Open Innovation Fund」 ファミリー向け知能ロボット"Jibo"を開発するJibo, Inc.への出資について | 2015年 | KDDI株式会社
・Fenox Venture Capital
上記は、FenoxとCACやセガサミーホールディングとのの共同設立ファンドからの出資
http://www.cac.co.jp/news/news214.pdf
MIT発のソーシャルロボット「JIBO」がアジア展開に向け1,600万ドルを調達——セガサミーやCAC Holdingsらが参加 - THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)
AIBOのことを改めて勉強
新しい自律型エンターテイメントロボットが、家庭にやってきた。
感情と本能を持ち、学習しながら成長していく。
もちろん、知性もあり自律して行動もできる。
そのロボットは人間の伝えたい事を理解できる。
ただし、言葉は話せない。
光や音、ボディーランゲージを使ってコミュニケーションする。
そのロボットは、とても可愛らしい。
家庭に溶け込み、生活に欠かせないものになるだろう。
そして、人間とロボットとの共存を目指す。
こんなロボットがついに発売になった。
きっと、大人気になること間違いない!
ただし、それは、1999年のこと。
いまより、17年も前のことになる。
こちらのサイトに詳しく開発コンセプトやエピソードが書かれています。
開発責任者の言葉としてこのようなことも。
、まず先に人間と共存して自然なコミュニケーションができるパートナーロボットを作っておいて、その次に有用性を持たせていくことではないかと思うんです。そして、エンターテインメントを核に追求しながら、家庭の中での有用性が何かということが明確にしながらそれに取り組んで行くというスタンスです。
エンターテインメントから、有用なものへという考え方だったんですね。
まずはどこから広げるかということで、AIBOという形を選んだというわけだ。
推察では、10万台以上売れて、数百億円の売上があったAIBO。
さすがにこのコンセプトはいまでも十分通用しそう。
ただ、もう一ケタ売るために、世界的ヒットにするためには何が足りなかったのだろうか?
・費用
初代の25万円から最終モデルが約10万円。
エンターテインメントだけには、ちょっと高いか?
・実用性
エンターテインメントから、有用なものへというコンセプトであったAIBOだが、
やはり、実用性がなさ過ぎたとうことだろうか?
・コミュニケーションの幅
動物的な自然なものでなく、機械的なナチュラルじゃない何かが問題であったか?
・非言語というコンセプト
やはり、言葉を話せないというのは飽きが早いのかもしれない?
・犬、動物というコンセプト
そもそも原体験があるものを模倣したのがよくなかった?
・当時の技術
実現するために使えた当時の技術がコンセプトに追いついていなかった?
と、思いつくところで、課題を挙げてみました。
AIBOのオフィシャルサイトにオーナーのインタビューも掲載されている。
・人生が変わった
・もう手放せない
などのコメントがある。
ここまで、ユーザーに言わせた製品ってやっぱりただすごい。